梅羊羹

05.ひしゃげたからだ

 

もうどうしようもないことがある。
例えば目の前で壊れてしまった体だ。
四肢は大破し、胴体は腰より少し上から真っ二つに曲がっている。
「彼女、ひしゃげちゃったねえ」
傍らで、哀れむかのような声を上げたのは、気心の知れた友人だ。
「乱暴に扱うからこうなるんだよ」
無責任な友人の言葉に俺は噛み付くように叫ぶ。
「それはお前が俺を怒らすようなことを言うからだろうが!!」
「だからって、まさかこんなことをするとは思わなかったんだよ」
彼女の左足を拾い上げた友人は、手についた赤を不満気に見ている。
「塗装中の彼女を投げてくるとはね」
彼女こと、間接可動式の美少女人形キミコちゃんの塗装中、
友人が俺のことを根暗だのオタクだのと延々とからかってきたので、
つい力が入ってキミコちゃんを友人に投げつけてしまったのである。
おかげでキミコちゃんは壮絶な姿となってしまった。
真っ赤な髪を塗っている最中だったので、辺りが赤の塗料で汚れている。
「お前も責任持って片付けを手伝えよ」
「えー面倒」
そう言ってキミコちゃんの脚をぞんざいにゴミ箱に捨てる。
「をい!! もっと丁寧に扱え!!」
「所詮ゴミでしょうが」
奴と俺との間には大きな溝があり、これは埋まる事は無く、これからも争いの火種になるだろう。



最終更新日 2005/05/05
一    言 電車男ってまだ読んでないなあ……。