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「おっす!」
目が痛む突風の中、元気よく挨拶したのは、懐かしい暴風娘だった。
俺がこのくにに来たのは、三年も前のことで、故郷に残してきた家族の顔もおぼろげになりつつある。
とはいえ、このくにで仕事を始めた俺としては、故郷の田舎へ戻るよりはこっちに骨を埋めるつもりで、故郷のことなどすっかり忘れていたのだ。
実際、上役の娘との縁談話も持ち上がって、この春には結納の予定である。
だというのに、幼馴染のこいつがやってきた。
黒い豊かな髪と、黒真珠のような大きな瞳が特徴的な美人なのだが、言葉遣いは悪いし気を使わないし、態度は悪いし、しとやかじゃないしで、外見の可愛らしささえなかったことにしてしまえるほど、生きの良い女なのだ。
「お前、何しに来たんだよ」
休日であって良かったと思いながら、目の前の美女の皮を被った獣に尋ねる。
「いや、約束通りお前さんの嫁にしてもらおうと思って来たんだけど?」
突然の展開に、俺は絶句する。
「そんな約束した覚えは無い!!」
「まあ20年も前の話じゃから忘れとるかもしれんがな」
「三歳当時の口約束なんざ覚えてねえっての!!」
「そう言うな。これでも、お前さんの嫁さんになりたくて、近寄ってきた男は全員K.O.ダウンにしてやったぜ」
「いやいやいや、お前みたいな凶暴女を嫁さんにしたくねーよ」
そういえば、田舎に居た頃、四六時中くっ付き回って邪魔臭かったな。あの頃にはもう俺のこと好きだったってわけか……。
なんか、世話の焼ける妹程度にしか思ってなかったから、全然気にしてなかったけど。見掛けだけは女らしくなったんだな。
って、そうじゃない。俺の出世のために、俺の嫁さんは上役の令嬢でなけりゃいかんのだ!
「そんなあ……。じゃあ、おいらの純情をこの20年間踏みにじってたっていうことかいな!?」
「お前は俺の体を何度となく踏みにじったがな」
プロレス技をかけられまくって、何度死にそうになったことか。
「それはそれとして」
「置いとくなよ」
突っ込むと、目の前の馬鹿女は舌打ちする。このやろう。
「まあ、昔は恥ずかしくてなかなか正面からじゃれることができなかった乙女心じゃし、許してくれるじゃろ?」
「許しても良いが、嫁にはしねえ。田舎に帰れ」
「うわ、人でなし」
「人じゃねえもん。どうせ俺は馬だよ」
「まだ根に持っておったんか」
「ああ」
馬面なのを気にしてるってのに、「馬ちゃん」と連呼しまくったことは一生忘れない。
おかげで、田舎を出るまであだ名が「馬ちゃん」だったんだからな!
「胆が小せえなあ」
「うっせえ」
その日は言い争いで一日が終わった。
結局暴風娘は泊まっていったのだが、これがきっかけで俺は田舎に戻るはめになった。
なんでかって?
言いたくない。
「できちゃったもん勝ちじゃね!」
「うるせえ馬鹿!!」
……そういうことである。
最終更新日 2005/05/05
一 言 方言丸出しの暴走娘って見てて楽しいです。
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