鈴の音と共に連れ去って

相良 雲梯

 

「雲梯ちゃん、昨日の試合もすごかったねー!!」
「まぁな」
興奮気味に出迎えてくれた竜人に、雲梯と呼ばれた緑色の竜人はまんざらでもないという顔で頷くと長い髪が揺れる。
群青色の髪を後ろで纏めてポニーテールにしているのだが、そでも毛先は腰まであり、解けば膝上ぐらいまでの長さになるものと思われた。
「さすがは雲梯ちゃん! 女性格闘家No.1は伊達じゃないね! 親友である私も鼻が高いよ」
「そうかな」
そう言って雲梯は翡翠色の瞳に戸惑ったような笑みを浮かべながら、顔を背けた。
本当は、宿無しだった雲梯を同居させてくれて、一番のファンだよと言ってくれるこの心優しい友人をもてたことに、不幸な身を心の底で泣く雲梯は、心底喜んでいるのだが、そういうことをさらりと口にできる性格ではなかったので、どうしても気恥ずかしくなって顔を背けてしまうのであった。
事務所の打ち上げを終え朝帰りをした雲梯と入れ替わるように、友人である竜人の女は仕事に出かけた。
雲梯も昨晩の戦いで疲れていたのでぐっすり眠ると、すぐに夕方になってしまった。
伝言ボードを見ると、今日は残業を前から頼まれていたので遅くなるとのことだったので、雲梯は久々に外で食事をすることにした。
行くのは勿論、いきつけの喫茶店セレクトだ。
友人のアパートを出て、表通りを横切り、赤煉瓦で舗装された瀟洒な歩道を上ると、その坂道の中腹にある喫茶店だ。
気の聞いた男が営むこじんまりとした店で、料理の味も良いのだが、何よりも雲梯は特にここのアイスレモンティーが好きなのだ。
葡萄の蔦が彫られた取っ手を握り、ゆっくりと扉を引いた。


凛とした鈴の音が店内に響く。
少し暗めだが、落ち着いた良い雰囲気を醸し出す店内に足を踏み入れた瞬間、店の奥から少女が飛び出してきて、慌てたように雲梯の背後へと隠れる。
「うわ、なんだなんだ!?」
驚いた雲梯は少女の顔を覗くように見下ろす。
短く茶色い巻き毛が印象的な竜人の少女は、5歳ぐらいの、世間で言うところの「まだまだ可愛い年頃」に見えた。
「こら、"憂い"! それは私の持ち物だろう!?」
見上げると、肩まで伸ばした薄い赤毛を掻き揚げて、小奇麗な竜人がやってきた。
セレクトの店主と同じ格好をしているが、まるで雰囲気が違う。どちらこというと、この男の方が顔は良い。
いや、男ではないかもしれない。と、雲梯は思った。
よく見ればつかみどころの無い端正な顔と、どちらかというと華奢な肩の線、そして声の妙も祟って、男女の別をあやふやにしている。
ただし、初老を越えた年恰好のため、性別があやふやなのかもしれないのだが。
「おや、失礼。いらっしゃいませ」
雲梯に気付いた相手は、少し慌てたように声のトーンを下げて、雲梯に小さく頭を下げた。
「いつもの店主は?」
「私が店主を務めさせて頂いております」
ここ最近は、大きな試合が重なって体調管理に厳しくしていたせいでこの店には来ていなかった。
その間に何かあって、代わりを務めているに違いない。
まぁ、壮年と言っても、髪の毛も薄くなってきていた店主のことだ。そろそろ身体のあちらこちらにガタがきていたのだろう。
「ふーん。で、この子は?」
「私の仔です。たった今、私の持ち物を勝手に自分の物としようとしたので追いかけていたところです。お見苦しいところをお見せして失礼しました」
それにしては歳が離れすぎているように見える。この男はお世辞でも60代後半にしか見えないし、少女は5、6歳という感じだ。
そう思いながらよく見ると、雲梯の長い尾にしがみついた少女の手には、真っ黒な紐がある。
子どもってなんでこう、よくわからないものを欲しがるんだろう。雲梯には理解できなかった。
「良いじゃないか、親の持ち物を子が持っていても問題ないんじゃないか?」
と言っても、雲梯が持っている親の持ち物だったものと言えば、この身体と名前ぐらいのものだ。
記憶もまだ不確かなほど幼い頃に両親を無くした雲梯は、今では顔も思い出せない両親の形見らしい形見を持ってはいない。
「困ります。親子といえ別の人格、対等の付き合いをする上でお互いの領域は守るべきでしょう」
「そういうもんか?」
両親亡き後、施設に引き取られた雲梯には、親子の関係はよくわからない。
なので、同棲している友人を心配して時折顔を出す友人の親と、友人の会話から、どうも親とは子どもをやたら可愛がるもののように感じていたのだ。
「そういうものです。他人の貴女には関係ないでしょう?」
「関係はないが、見過ごせないと言ったら?」
言ってから、自分でも何故そう言ったのだろうと思ってしまう。
もしかしたら、子どもに容赦しないこの男の態度が、雲梯や子ども達に厳しかった施設の大人達を思い出させたのかもしれない。
嫌がる子どもから無理やりオモチャを取り上げたり、食事を残した子どもを残した物と一緒にトイレへ連れて行って強引に食べさせたような大人達に、幼い雲梯は何度も怒りを覚えた。
「……はぁ。わかりました、貴女のお気の済むままに」
そう言って一礼すると、店主代理はカウンターの向こうへと引き下がった。
その顔が酷く強張っていたので、雲梯は「ざまあみろ」と心の中で呟く。
「良かったな、名前はなんというんだ?」
店主代理から少女へと視線を移すと、少女は今にも泣きそうな困惑顔で俯く。
「うん? どうした?」
「その仔はまだ生まれたばかりで言葉が話せません。名前もまだありませんので、お好きなようにお呼びください」
少女の代わりに答えた店主代理の言葉に雲梯は耳を疑った。
「名前が、ない?」
「えぇ」
「親なのに、名前をつけてやらないのか?」
雲梯の問いに、生真面目な顔で頷く。
「はい。それが私共の普通です。何か問題でも?」
その態度が、雲梯の中にある身勝手な大人への怒りを煽る。
「子どもをなんだと思ってやがる!」
「邪魔者」
「なんだと!!」
今にも掴みかかろうと一歩踏み出した瞬間、尻尾をぐいっと引っ張られた。
見れば、少女が首を横に振りながら雲梯の尾を掴んでいる。
「こんな親でも、殴られるのは嫌なのか?」
尋ねると、少女は小さく頷く。
「そっか」
親子の情がわからない雲梯だが、少女の意志は尊重してやりたかった。
「何かの縁だ。私が名前をつけてやる。そうだな……シグレなんてどうだ?」
時雨とは、格闘家としての相良雲梯の名前だった。
「シグレ?」
少女が自身の顔を指しながら小首を傾げる。
「喋れるじゃないか!」
「シグレ、シェベレル、ナッタ」
おとなしい笑みを浮かべたシグレの頭を撫でると、カウンターの向こうから声が響く。
「まだ片言程度か。名前を貰えば当然もう少し喋れるはずだろうに」
雲梯が睨むと、店主代理は不服そうな顔で視線を逸らす。
「どうもただの竜人じゃないみたいだが、その態度はなんだ?」
格闘家なんぞをやっていると、気配みたいなものを感じ分けることができる。
だが、この二人から感じる気配は、なんというか妙だった。
今までに感じたことのない、強いのか弱いのか言い切れない不可思議さがあるのだ。
いや、それはこの二人だけではなく、通いなれたはずのこの場もそうである。
「えぇ、私は竜人ではありませんから。ここは異世界ですよ。貴女の常識が通じると思ったら大間違いです」
さらりと答えられて、雲梯はまたも翡翠色の瞳を丸くする。
「異世界、だって?」
馬鹿なと思ったが、ちらりと視界の端に捕らえた扉が、目の前で消え去るのを見て、そうかもしれないと思う。
だが、納得はいかなかった。
雲梯の呟きに答えるように、傍らのシグレが口を開く。
「ココ、イセカイ。シグレ、"憂い"。パパ、テンシュ。オネエチャン、ダレ?」
「相良 雲梯だ」
小首を傾げたシグレへ雲梯は無意識に微笑む。
「サガラ、ウテナ。オネエチャン、サガラ、オネエチャン、ウテナ」
「雲梯で良いぞ」
「ウテナ、オネエチャン!」
「そうそう」
パッと笑って、シグレが腕に抱きついたものだがら、雲梯は僅かに身体のバランスを奪われて苦笑した。
「すっかり懐いてる」
「何か言ったか? この下種!」
「パパ、ゲス」
皮肉な声で言った店主代理に、雲梯が睨むと、シグレが雲梯の言葉を真似する。その片言具合が、妙に可笑しかった。
すると、店主代理はいかにも不快そうに顔をしかめてシグレを見る。
「その、パパと言うのはやめろと何度も言ってるぞ」
シグレから視線を逸らし、雲梯に向かって笑う。
「それと、私にはヴェルシーファという立派な名前があります」
その言葉に、シグレが歌うような声で言いながら雲梯の手をひき、カウンター席へと座らせる。
「パパ、テキトウ、ナマエ、ツケラレタ、フリンアイテ♪」
「不倫相手に適当な名前をつけられた?」
隣の席へ腰掛けたシグレが頷く。
「ウン♪」
その声は、耳に残る悲しいメロディーで、意味もなく雲梯の胸を締め付けた。
こんな小さい子がそんな事実を聞かされたのだ、悲しくないはずはない。
きっと、この子が口を聞けなかったのも、おちついた寂しい笑みを浮かべるのもそのせいに違いない。
「これは、しっかり教育しないといけないようですね?」
「ヤー!!」
指を鳴らすカウンターの向こうの相手に、シグレが震えたので、雲梯もまた指を鳴らす。
「私の前で暴力は振るわないでもらおうか? それとも、あんたはサンドバックになる覚悟があるのか?」
挑発するような笑みに、さすがの店主代理もすごすごと言った雰囲気で背を向ける。
いくら相手が男だと言っても、格闘家をしていると、こんな初老の優男に負ける気がしない。
緊張した沈黙を破ったのは、冷蔵庫を開ける音だった。
「お客様に手を上げることはできません。どうですか一杯。今日は私から奢りましょう」
そう言って差し出されたのは、アイスレモンティーと、クリームやサラダの乗せられたクラッカーだ。
「そりゃどうも」
気に食わない相手だが、雲梯は遠慮なくクリームの乗ったクラッカーを摘んで頬張る。
夕食というには少し甘そうにも見えたが、食べてみると、塩気のあるクラッカーと、落ち着いた味のクリームチーズ、その下に盛られた塩漬けの小さな卵のプチプチ感が絶妙なハーモニーを生み出して美味しい。
次のクラッカーも、紫オニオンのスライスと水菜とレタスの刻んだものが、その下に敷かれた生ハムと相性良く美味しい。
何よりも、少し塩気の強いクラッカーの後を潤すアイスレモンティーが、程よい甘さで口の中をさわやかにしてくれる。
店主には悪いが、こちらの男の方が料理の腕は確かなようだった。
食べながら視線をシグレに移すと、シグレは目の前の龍の置物をじっと見つめている。
青銅製らしいが所々錆びていて年期を感じさせる置物は、どことなく輝いているようにも見える。
土台は雲海を模しており、気持ちよさそうに天へと昇っていく龍の姿をしているせいか、その眼はとても活き活きしており、まるで生きているかのようだ。
そう思っていると、龍と目が合ったような気がして、雲梯は慌てて目を擦り、もう一度龍を見る。
しかし、やはりただの置物だった。
変な気分になったので、雲梯は自分から店主代理に声をかける。
「ところで、さっき時雨が持っていた紐はなんだったんだ?」
「前のお客様の持ち物です」
「忘れ物か?」
「いえ、違います。どちらかというと、忘れ形見と言った方が近いでしょうか。何せ、死体に絡まってた紐ですからね」
「なっ」
驚いた雲梯が反論するよりも先に、店主代理が言葉を紡ぐ。
「あるところに、純血の娘がいました。しかし、純血故に子どもを産むことができないとわかり、幼いうちに親族から追放され、一人で生活していました」
似ている。そう思った瞬間、雲梯の心は過去へと戻った。
施設を出る時に、親族がいないのか聞いた雲梯は、その親族達が雲梯の面倒を嫌がって施設へ入れたのを聞いて泣いた。
施設の中では笑顔を絶やさず、喧嘩も強く頼れるお姉さんとして振舞っていた雲梯も、この世のどこかに自分を憐れんでくれる血の繋がった誰かがいると信じていた。その思いをいともあっさり砕かれた日の悲しみは、今でも思い出すと胸が痛い。
「それでも、幼い足では遠くの街へ行くこともできませんから、親族達とはとても近い場所にいたわけです」
それでも、生前の両親のことを聞きたくて、なんとか調べた父方の叔父の家は、以外にも施設のすぐ近くだった。
だが、父の名前を出すと、不機嫌な顔で締め出されてしまった。
「ある日、娘が意気揚々とねぐらから出ると、そこに鉢合わせた親族達は、まるで薄汚いものを見るかのように娘を罵ったあと殺してしまったそうですよ」
他の親戚で、回れそうな相手を片っ端から訪ねたが結果は同じで、時には何故生きているのかとさえ言われた。
「その紐は元々赤く、血の縁を現しておりましたが、彼等の言葉で黒く染まり、今は私の元を経て、シグレの元へと辿り着いたわけです」
親戚を誰も信じられない状態だった雲梯は、腕っ節の強さを見込まれて格闘家となった。
お得意の笑顔を浮かべつつ、心では自分の不幸を呪って何度も涙を流していたある日、友人と出会った。
暴漢に絡まれていたところを助けた雲梯が、事務所の寮から出て部屋を探している最中だと言うと、同棲しようと誘ってくれて、それからずっと一緒にいる。
最初は、格闘家なんてやめろと言っていたが、今では誰よりも雲梯を応援してくれるファンだ。
あの子がいなくなったらと思って、雲梯はゾッとした。そして急にあの部屋へと帰りたくなった。
「そいつは不幸だったな」
おざなりに言って、残りのアイスレモンティーを飲み干した雲梯は立ち上がる。
見れば、いつの間にやら扉は戻っていた。
「お帰りですか?」
「あぁ」
帰ろうと席を立った雲梯に、シグレが付きまとう。
「ウテナ、オネエチャン、シグレ、イル!」
「でも、帰らないと」
涙を零しながら腕に縋りつくシグレに、困惑する。
「カエル、ヤダ!」
扉の前までやってきても、まだ放してくれそうにないシグレをどうしたものかと思っていると、カウンターの向こうから声をかけられた。
「本当に帰る場所が貴女にはあるんですか?」
「どういう意味だ?」
振り返ると、薄い色の赤毛から覗く瞳に薄ら寒いものを感じる。
「今、お友達の家に居候しているそうですね。彼女も、さすがにお荷物に思ってるんじゃないですか?」
「そんなはずはない」
何故そんなことを知っているのかはどうでも良かった。
今朝も笑顔で雲梯を出迎えてくれた彼女が、そんなことを思っているといわれて腹が立ち、知っていることへの疑問が浮かばなかったのだ。
「本当にそう言い切れますか? つい最近、喧嘩したのに? 原因はいつもあなたで謝るのはいつもお友達なのに?」
「何故、知ってる!?」
確かに、三日前に、目先の試合だけしか考えられずに心無いことを言って喧嘩してしまった。
翌日には、彼女の方から「試合前で緊張してるのに、変なこと言ってごめんね」と謝ってきた。
そして、そういう会話はけっして珍しいことではなかった。
これはさすがに、頭に血が上り始めた雲梯でも不信に思う。
「私はそういうものですから。それで、親に捨てられた貴女が本当に帰れる場所はおありですか?」
「くっ」
雲梯は言葉に詰まった。
両親の持っていた家を探し当てたが、そこはもう別の家族が住んでいたし、親戚からは嫌われている、事務所との折り合いもそれほど良くはない。そして友人まで雲梯を見捨てるなら、雲梯は本当に帰る場所を無くすだろう。
「ウテナ、オネエチャン、シグレ、イル!」
「のうのうとどこへ帰るんですか?」
「…………」
愕然とした。
指摘されて始めて、自分がこんなにも必要としてくれる人がいない事実に気付いて。
最後の頼みの綱である友人も、口では優しいことを言うが、雲梯の笑顔同様、表面的なものだったらどうだろう。
そう考えると、途端に帰る気が失せた。
「ウテナ、オネエチャン?」
覗き込んだ少女の、悲しげな瞳に映る自分が、とても惨めだった。
「……少しの間、時雨と遊んでやるよ」
呟くように言うと、シグレが満面の笑みを浮かべて手を引く。
「ホント? ウレシイ! シグレ、ウレシイ! コッチ、コッチ!」
シグレに手を引かれて、雲梯はとぼとぼと店の奥へと入って行った。
雲梯が見えなくなると、店主代理は舌打ちして店の奥を睨みつける。
「ちっ、食事を横取りされた! ……まぁ、良い。アレは生まれたばかりだし、生んだばかりの私よりも体力がないから、今回は譲ってやろう」
それから消えかかった扉に視線を移す。
「お前が次の客を運んできてくれれば良いだけだ、扉。今度はもっと上質の不幸を抱えた客を頼むぞ」
扉は特に返答もせず、掻き消えた。


店の奥が以外に広いので驚きながら、手を引かれて小さな部屋へと入る。
いかにも子ども部屋と言った感じの部屋なので、きっとシグレの部屋なのだろう。
「何して遊ぶんだ?」
身を屈めて入ってきた雲梯の問いに、シグレが振り返る。
「オナカ、ヘッタ」
幼い少女の顔にはめ込まれた瞳が笑う。
雲梯は寒気を感じ、無意識のうちに逃げようとしたが、腕を強く握られる。そして……
「え?」


古い形のテレビを見ているシグレの背後、部屋の入り口に店主代理が立つ。
「おや、竜が途中から見えなくなったと思ったら、彼女の世界へ飛ばしていたのか?」
見れば、テレビに映った映像は雲梯の部屋だった。
深夜になり、翌朝になり、一週間経っても戻らない雲梯を心配し、すっかりやつれてしまった友人が映し出されていた。
「おねえちゃん、杞憂に終わっちゃった」
「そのようだな」
いくらか流暢な言葉で話すシグレに、店主代理が頷く。
テレビはまた別の映像を映した。
そこには、親族が集まって、シグレの溜めた財産を誰が受け取るかでもめている。
「ねぇ、パパ。この人たちが、おねえちゃんのパパとママを殺したの?」
「そうだ。少しは他人の人生が見えるようになったか? あと、パパはやめろ」
傍らに座った店主代理は、シグレの歯茎を捲り上げる。
「どうもお前は、私よりお前の母に近いらしいな。命を好んで喰らう辺りが」
赤くなった歯についた汚れを、片手にもった歯ブラシで擦る。
膝枕されて歯を磨かれるシグレは、とてもくすぐったそうだ。
「次からは、"食べた"ら自分で歯を磨くんだ。それと、"腹"の中の調整もしていかないといけないぞ」
そう言って、シグレの腹を撫でると、シグレは苦しそうに顔を歪めた後、ほっと息を吐く。
「ひゃーひ、ぴゃぴゃ(はーい、パパ」
「パパと呼ぶな」
寝転んだまま片腕を上げるシグレに店主代理は苦笑した。
歯磨きが終わり、口を濯いできたシグレが、テレビを見ていた店主の背中に抱きつく。
「パパ、ママはどうしてシグレをおいてったの?」
寂しそうな瞳を向けるシグレに、店主代理は振り向かないで答える。
「"狂気"である彼女は私と違う。私のように仮にも器があるわけでもなければ、一所に留まることもできない。逆にお前は私のように仮にも器を持って生まれてしまった。だから、彼女には育てることはできなかった。母親がいないと淋しいか? それと、どさくさに紛れてパパと呼ぶな」
「ううん。でも、ちょっと気になるかも」
いつの間にかテレビ画面は消え、龍が画面から出てきてシグレの顔を舐める。
「お帰り。おつかいごくろーさま」
そう言ってシグレが頭を撫でると竜は喉を鳴らす。
「お前の"対"として私が産んだ竜は気に入ったか?」
「うん。この仔もシグレのこと好きってゆーから好き!」
尖った龍の口先に小さくキスすると、龍がにこりと微笑む。
「ママがシグレを産んでくれて、パパがこの仔を産んでくれたから、シグレとこの仔は本当に嬉しいの」
首に腕を絡めてきたシグレを引き剥がしながら、店主代理は短い髪を掻き揚げる。
「だから、パパと言うな。私はWerseevaだ」
「だって、ママがそう呼びなさいってゆってたもん♪」
引き剥がされても諦めずに抱きついてくるシグレに、店主代理はただただ苦笑するしかなかった。



名   前:相良 雲梯
読み仮名:さがら うてな
年   齢:23歳
外見年齢:23歳
性   別:女
種   族:竜人
世   界:竜人の住まう世界。地球にある日本の電信柱から入れる(何処でもOK)どちらかと言えば東洋風な世界。
職   業:格闘家
飲 食 店:喫茶店「セレクト」によく行く。飲むのはアイスレモンティー。
性   格:負けず嫌い(口喧嘩でも実際の戦闘でも)短気(すぐキレる)
不幸要素:小さい頃に家族をなくし、今は友達の竜人の所に居候生活。なので竜人(もしくは生き物)の愛情を知らない。知ってるのは友情くらい。
備   考:「おばさん」(ばばあなど)が禁句。言うと百発くらいのパンチが来る。容姿は、群青色の長い髪の毛(ポニーテール。ポニーテールをしている時でさえ髪の毛は腰まである。垂らすと膝上まである)翡翠色の瞳。鋭く、長い爪に良く見ればある緑色の鱗。顔には鱗はない。東洋竜に近い竜人なので翼はない。尻尾は、1メートルほどある。言葉使いが乱暴。一人称は「私」
男勝り。人間より力があるので、人間の格闘家と戦ったら秒単位で倒してしまう。
店   主:あんた
第一印象:所々錆びている……青銅製っぽい物だな。古そうだ。東洋風の竜みたいだ……古そうなのに何故か輝いているように見える。気持ち良さそうに天に昇っている。その眼は活き活きしていて、まるで生きているみたいだな。


実はこのキャラの名前って私のクラスで作っている映画での私の役者名なんですよね(爆)
雲梯って読みにくくてウザいんだよコノヤローとかって思ったら「時雨」(しぐれ)に変えても良いです。
備考の付け足し:心ではいつも涙を流しているが(不幸なので)いつも、明るく振舞っている。


キャラクター提供元 : 輝水 光藍 様



最終更新日 2005/05/13
感    想 あの凶悪店主が子持ちになった衝撃の回。
        シグレちゃん初登場で人殺しってどうよ。
        何はともあれ、ここから黒さとグロさが急増します。