鈴の音と共に連れ去って

クー=ヴァン=ジ・エアリス

 

闇夜は良い。全ての輪郭を奪って、その浅ましさを見せ付けないでくれるから。
そんな事を思いながら彼女が眠りについたのは、夜半近くのことだった。
妙にリアルな夢は、今までと趣が違うようで、彼女は一人馴染みの店の前に立っていた。
『Free wings』という店のはずだが、周囲に立ち込めた霧が深く、扉以外は何も見えない。
妙な違和感を感じながら、その扉を開けると凛とした鈴の音が響いた。瞬間、店内に立っていた顔の無い誰かが声を上げる。
「陽 春龍! 今の貴女にここへ入る資格はない! 即刻立ち去りますようにっ!」
その言葉に、彼女は腰から下げた拳銃を構え、顔の無いソレに向かって乱射した。
「その名を呼ぶなぁぁぁっ!! 私はクー=ヴァン=ジ・エアリスだぁぁぁぁっ!!」
次の瞬間、心臓の痛みと共に跳ね起きると、住み慣れたボロアパートの部屋だった。
「はぁはぁ……夢……?」
荒い呼吸と、押さえつけられていたかのように高鳴る鼓動を聞きながら、両手を見た。
明かりの無い部屋で、僅かに輪郭を主張する手には、確かに拳銃を引き絞った後の膠着した感じがあったが、嗅いでみても火薬の匂いはしない。
嫌な夢だと思いながら、彼女、クー=ヴァン=ジ・エアリスは、再度ベッドへと潜り込んだ。
目覚まし時計の警報に起き上がると、クーは体中を伸ばした。
「変な夢を見た……気がする」
呟いてベッドから出ると、朝の支度を始める。着替えと食事を終えると、住処を出た。
暫く歩くと、通勤前の静かな気配に満ちたストリートが見えてくる。大きな銀行や官舎は更に二つ先の通りにあるとはいえ、この道もそれなりに賑わいがあり、通りには朝早くからゴミ出しをするギャルソン姿の男を見ることができる。
「クーちゃん、おはよ〜」
突然声を掛けてきた娘を振り返る。
「おはよう、シホ。夜更かしでもしたか?」
クーが尋ねると、仕事仲間であり友人でもあるシホは首を傾げて見せた。
「なんで?」
「目の下に隈ができてる」
「うそ、ちゃんと化粧したのにっ!!」
二人はそれとなく世間話を交わしながら、仕事場であるレストランへと入る。有名な建築会社の系列だとかいう話だが、クーにとって働ける場所ならばそれで良い。
気軽な態度の店長に挨拶し、仕事着に着替える。
シホはウエイトレス姿になった後も、しきりに目の下の隈を気にした。厨房着のクーは、そんなシホをなだめすかして、開店を待つ。
開店が昼前であるせいか、二人とも最初の一時間はそれほど忙しくない。忙しいのは正午少し前からの三時間だ。
二時を回った頃だろう、ウエイトレスが足りずに料理皿が溜まってしまったので、クーは仕方なくフロアーへ出る。
こんな時の為に、厨房着はそれとなく品の良いものだったりするのだが、ウエイトレスやウエイターのそれに劣ることは間違いない。
二、三回、厨房とフロアーを行き来して、やっと皿が回り始めると、突然聞きなれた音が響いた。銃声である。
反射的にテーブルの影に隠れたクーは、犯人集団を睨む。
「死にたくなければ金を出しな」
やることも、言うことも、身なりさえも、なんて三流なんだろうと思いながら、クーは犯人に気付かれないよう、テーブルや壁の隅を移動して近づいて行く。
客達が硬直し、金を取られていく姿を横目に腰を浮かせた瞬間、犯人の一人が声を上げた。
「そこの店員、大人しくしてろっ!!」
バレたか!?
クーの顔色が変わり、焦りが浮かんだが、どうもその犯人の視界にクーはいないようだった。
見渡すと、すぐ傍のテーブルで泣き喚く子どもを必死であやす老婆を守ろうと、シホが両手を広げていた。
「お客様に手をあげないでくださいっ」
普段の甘い態度からは想像もできないほど、凛としたシホの態度にクーは驚きながら、犯人の方をちらりと見る。
犯人は、手に握った拳銃を構えている。よく見れば、まだ人を殺したことがないらしく、その手が震えている。
次の瞬間、痙攣した指先が、誤って引き金を引くのを見たクーは、無意識に飛び出してシホを突き飛ばした。
銃声、衝撃、悲鳴、苦痛、罵声、転倒、警報。
あらゆるよからぬことがクーの身に起こったようで、血生臭さを感じた。
視界の端で、犯人の半数が逃げ出し、残りの半数がごつい体の店長と男性店員に組み敷かれているのが見える。
「クーちゃん! クーちゃん!!」
目の前で、泣きそうな顔のシホが名前を呼んでいる。
火災報知機が発動したらしく、何もかもがずぶ濡れで、シホが泣いているのかわからなかった。
(こんな終わり方か)
そうぼんやり思うと、全ての感覚が遠ざかっていった。


凛とした鈴の音が店内に響く。
クーは、つい最近聞いたような音色だなと思って、すぐ後ろの壁に背中を預ける。
(どうしてここにいるのだろう。というか、ここはどこだ?)
見渡すと、天井から降りそそぐ春の日差しが、円柱状の室内を隅々まで照らしているのだが、磨き上げられた薄緑色の大理石の床に置かれているのは、いつか殺した金持ち達の使っていた家具のようだ。
部屋の奥に設けられた黒い階段に沿って視線を上げると、柱もないというのにどうやって支えられているのだろうか、柵の無い床がある。
その床は二階だけではなく、見上げれば、小さな青い空を切り取った天井ギリギリまで同じ構造になっており、何階まであるのかざっとみただけではわからない。
各階の壁には十数基の扉があるのだが、いつまで眺めていても誰かが出てくる気配はなかった。
ふと視線を下ろすと、目の前に一人の男がいた。クーはその男を見て、体を硬直させる。
白銀色の体毛に覆われた竜人は、天使のような翼を背負い、絹のような黒髪から黒耀の角を覗かせ、大粒の黒真珠を思わせる瞳をクーに向けている。眉目秀麗という言葉が良く似合う顔だ。
「……美しい……」
ボソッとつぶやいた男の言葉に、クーは弾かれたように背を向けて逃げ出そうとするが、背後はどこまでもただ白い壁があるだけだ。
この数年、ずっと逃げてきた相手の一人がすぐ傍にいる。その事実が、クーの判断力を奪い、壁に立てられた爪が剥がれる。
「やめなさいっ」
男は慌てて駆け寄りクーの両腕を封じるが、クーはその手を振り払おうと暴れる。
「離せ、離せ、離せ、私はもう戻らない、あの場所に戻らない!!」
「わかっていますよ、クー=ヴァン=ジ・エアリス」
その言葉にクーは動きを止め、背後から彼女を抱えるように押さえ込む男を見た。
よく見れば見るほどそっくりな顔つきだが、彼女が最後に見たままの姿であるし、あの男が苦笑交じりの弱り顔を自分に向けることがないことも知っている。
これは別の者だ。そう確信した瞬間、今度は冷静な怒りが湧いた。
「貴様、そんな姿をするなっ!!」
「……。では、どんな姿がよろしいのですか?」
男はクーを放すと、白い液体となって床に広がったと思った瞬間、別の形となって立ち上がる。
それは、先ほどの男と同じ種族の青年で、これもまたクーにとって恐ろしい相手だった。
クーが震えたのを見て取ると、また輪郭が溶けて新しい形を作る。それを何度も繰り返した後、姿を失った液体は、最初の男の姿へと戻った。
「どれでも怯えるなら、このままで我慢してください。ね?」
哀願するような瞳で問われて、クーはぎこちなく頷く。
心では否定したかったが、体が許さなかった。否定することで何が起きるのか、長い長い時間をかけて教え込まれてきた。いわばトラウマだった。
「ところで、まだ自己紹介してませんでしたね。私は……」
「飛牙……様?」
苦痛に満ちたクーの言葉に、飛牙と呼ばれた男は苦笑する。
「貴女がそう呼びたければ、そうお呼びください。でも、私は彼ではない。いえ、目の前で変化したのだからわかることでしょうが、私は全うな生き物でさえない」
「……そのようだな。あの男が私にそんな態度をとるはずないし、変化を見てしまったから信じないわけにもいかないが……」
いまだ疑いと恐怖を露にするクーを見て、偽飛牙は苦笑した。
「お茶でも飲んで落ち着いては如何ですか?」
部屋の中ほど、吹き抜けの塔の底辺とも言うべき場所には、お茶会の用意がされていた。
クーはその誘いを断りたかったが、首は縦に頷くように動いた。
ここまで体の制御ができないものかと悔しく思いながら、席に着き、茶を啜る。
毒でも入っているのだろうと覚悟していたが、毒の味はなく、普通に美味しくてお代わりをしてしまう。
偽飛牙は笑いながらお茶を注ぎ、軽食も薦めてくれる。こちらもなかなかの味で、ついつい食が進む。
「ところで、ここはどこだ?」
胃の中が満たされてホッとしたのか、幾分、体と心を制御できるようになったクーは、目の前で茶を啜る偽飛牙に尋ねた。
「夢よりもなお夢に近く、眠りでさえも簡単に近づけない場所」
謎掛けのように答えた偽飛牙に、クーはムッとした。自慢ではないがクーは学歴がない。
16歳まで全うな教育を受けられず、ここ数年で色々なことを覚えたとはいえ、いまだに常識や比喩に疎い部分が多々ある。
それを知ってか知らずか、このように歪曲に物を言う相手は好きになれない。しかも顔が飛牙のものであればなおさらだ。
「そんなに来るのが難しいなら、どうして私はここにいる?」
「……扉が貴女を連れてきた。ただソレだけ」
僅かに言いよどんだ言葉に、クーは意識が途切れる直前のことを考えた。
どこで何をして居ただろうと唸っていると、急にレストランでの光景を思い出して立ち上がった。
厨房着のままの胸を押さえると、血の後は無く、痛みもない。
「私は死んだのか?」
ゆっくりと座るが、やはり胸に穴が開いているようには感じなかった。
「そう思いますか? そうだとしたらここは、天国か地獄ってわけですね」
これ以上無い冗談だとでも言いたげに笑う偽飛牙に、クーは眉根をひそめる。
「…………違うのか?」
「本当に信じちゃったんですか?」
問いを問いで返されて、クーは不快さを露にする。
「あぁ失礼。あんまりにも反応が可愛くて。えぇ、でも、ここは天国でも地獄でもありません。帰ろうと思えば帰れる場所です」
「本当か? 帰り道は?」
ここがどんな場所でも良い。ただ、帰れるならば帰りたい。
あちらの世界には本物の飛牙がいるだろう。だが、それ以上に、心許せる友人がいる。
死ぬにしても、彼女の、シホの無邪気な笑顔をもう一度見たかった。何せ、助けたというのにあんなに泣かれてしまって申し訳なかったから。
「帰りの扉はただ一つ。それ以外は開かないのですぐわかります。だけど、それがこの塔のどこにあるのかは私にもわかりません」
そう言って偽飛牙が見上げたのに釣られて、クーも顔を上げた。
先ほど見たとき同様、天井までは果てしなく遠く、扉は百を優に超えているようだった。
食事を終えたクーは、早速、部屋の奥にある黒い階段に向かって、その手前で足を止める。
階段のすぐ脇に置かれた白磁の彫像に目がいった。
「男……?」
顔のない彫像は男のようであるのだが、どうも違和感がある。その足元には犬のような生き物が、その腕には鋼の蛇が絡みついている。
「男に見えるんですか。へぇ。」
「男じゃないのか?」
後ろから付いてきた偽飛牙に尋ねると、相手は肩を上下させて笑う。
「見る人によっては、男にも女にも見えるそうですよ。これを作った男は、死んだ恋人と親友を取り戻すために、彼等の器を作ろうとしました。その、神に反する悪魔の所業を罰せられ、民衆の怒りにさらされ命を落としたそうですけどね」
くすりと笑って、偽飛牙は鋼の蛇を指し示す。
「尾を口にした蛇は、永遠、循環、命……そういったものを表すそうですが、土くれから命を作ろうとするのは神だけで十分だと思いませんか?」
問われてクーは口をつぐんだ。
死んだ人間が甦るなら、どれほど自分の罪も軽くなるだろうと思っていたからだ。
二人は無言で階段を上り二階に足を踏み入れる。柵が無いとはいえ、足場が狭いわけでもなく、偽飛牙と肩を並べても更に余裕があった。
すぐ傍にある一枚目の扉に手を掛けるが……開かなかった。
「まぁ、一枚目ですし仕方ありませんよ」
そう言って、ドアノブに赤い札を掛ける偽飛牙。
「なんだ? その紙は」
「確かめたという印です。名案でしょう?」
にっこり微笑まれて、クーは顔を歪めて頷く。
それから二人は、二階の残りの扉を確認し、三階、四階、五階と、順に上っていった。
六階に足を踏み入れた瞬間、それまで沈黙を保っていた偽飛牙が口を開く。
「この姿、飛牙さんでしたっけ? 彼と貴女との関係は"きょうだい"なのでしょう。そんなに怯えなくても宜しいでしょうに」
二つ目の扉を確認したクーが、震える肩口に偽飛牙を見た。
「彼が、いや、彼等が私にした仕打ちを私は忘れない。例え記憶を亡くしたとしても、この体は忘れないだろう!!」
この怒りを、あの頃、恐怖に負けず叫べたならば、今とは違う未来があったのだろうか。
しかし、幼い少女には否定的な言葉を呟くことさえ、拳や固い靴の的になる危険性があった。あるいはもっと酷いことをされる危険性が。
「すみません、私は、誰かに優しくすることが苦手なんです。どうやれば、傷つけないですむのかわかっていても、できないように造られているんです」
泣きそうなほど辛そうな瞳で俯いてしまった男に、クーは背を向けて歩き出す。
優しくすることが苦手というのはクーもさしてかわらない。生き残る上で優しさなんか必要なかったからだ。
しかし、彼女はもう優しさを知ってしまった。シホの存在も、名付け親の存在も、他にも何人かの人々が、彼女に誰かを思いやることを教えてくれた。
そんな彼らを失う恐怖、もう会うことの叶わないという恐怖は、飛牙に対する時とは違う意味で恐ろしかった。
早足で扉を改めて行く作業に没頭していると、後ろから声を掛けられた。
最初は忌々しくて無視したが、「クー」と呼び続ける声が段々哀れになってきて振り替えると、泣きそうな顔の偽飛牙は小さく笑った。ホッとしたような笑みに驚く。
まるで子どものようだ。と内心呟きながら尋ねる。
「何の用だ?」
「そろそろお昼にいたしましょう。腹が減ったら戦もできないと申しますでしょう?」
言われて、廊下の端から天井を見上げると、真上に上った太陽が瞳を焦がすように光っている。
「そうだな」
「では、そこのソファでお待ち下さい」
言って、偽飛牙は、つい今しがたクーが改めたばかりの扉を開けて入っていってしまった。驚いてその後を追うように扉を開けようとしたが開かない。
呆然としていると、二つ隣の扉から慌てたように偽飛牙が現れる。
「な、なんでっ!? だっ……! でも!! だから!!」
言葉にならない驚きをぶつけると、偽飛牙は傍らの小テーブルに置かれた竜の置物を持ち上げながら答える。
「貴方の求める場所へと戻る扉を示すことはできませんが、貴方を持て成すためならばこの空間も、私自身も、そしてこの竜も、最上の行いをするものです」
言いながらクーに差し出した竜の置物は、青銅製の西洋竜でその長い鬣も見事に彫り上げられている。決して悪い品ではない。
だが、クーは受け取るのを拒む。その頭部に嫌悪感を覚えたのだ。
「小狼……」
精悍というよりも愛らしさを讃えた竜の顔は、飛牙の弟、クーのすぐ上の兄の顔そっくりだった。無邪気に笑うその顔が、より一層、過去の恐怖を煽る。
「いやっ……」
無意識に下がっていたクーは、突然、足場がなくなる感覚に驚く。見れば、いつの間にか床の終わりまで来ていた。そう察した瞬間、体は落下を始める。
床へ体を打ち付けて死ぬのだ。そう思った瞬間、体をひっぱられる。見上げると、必死の形相をした偽飛牙が、クーを抱きかかえて飛んでいる。
「私や竜にも責任はありますけど、お願いだから死なないでくださいっ!!」
怒鳴りながら抱きついてきた偽飛牙は、生きている匂いがしないなと思った。
助けられたとはいえまだ信用ならなかったが、死にたいわけでもないので、大人しく小狼顔の竜の置物を抱いて、偽飛牙が戻るのを待つことにした。
ぼんやりと長椅子に腰掛けていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは次第に大きくなり、クーは驚いて周囲を見回す。
『薄汚い汚れ物。お前さえおらなんだら、吾ら陽家のきょうだいはこれほど狂いはしなかった。悪意ある元凶、生きるべからざる者、それでも殺すことかなわない悪夢、お前はそういうものなのじゃ』
口元を扇子で隠した白竜人の女が、衣擦れの音を響かせて近づいてくる。
クーはその姿に目を丸くして、手の中の竜の置物をギュッと握り締める。
「麗華姉さま……」
『その名を口にするでない、汚れ物め。お前なぞに陽家の血が流れていると思うと、おぞましくて夜も寝付けぬ』
一歩、また一歩と近寄る麗華に、ガタガタと震えて涙を流したクーの手の中で、小さな竜の置物が咆哮をあげる。
『愚か者がっ!! そこな娘は守るに値せんというにっ!!』
麗華は激怒しながら透明になり、やがて消え去った。
「な……なんだ、今のは……」
手の中の竜を見ると、竜は誇らしそうに見返すと、前足をクーの肩口へ掛けてその頬を伝う涙を舐める。
まるで生き物のような感触だが、やはり生きている匂いはしない。
「守って……くれた……のか……」
クーの問いに、甲高く喉を鳴らして頬を摺り寄せてくる竜は、本物の小狼とは全く違う。
震える手で抱きしめていると、傍らの扉が開いて偽飛牙が現れた。
「ちゃんと彼女を守っていたか?」
そう偽飛牙が尋ねた先では、竜がしらんかおで置物に戻っていた。
昼食もこれまた美味しく食べると、少し休んでから二人は動き出した。先ほどと違うのは、偽飛牙の手の中に竜の置物が抱かれている点だろう。
さらに数階上ったところで、偽飛牙は口を開いた。
「そういえば、どこかの学者だかが言った言葉に、人生の例え話があります。その人物曰く、人生とは塔のようなものだそうです」
扉の確認を続けるクーは何も言葉を返さない。
元々、会話に積極的に参加する性格ではなかったのもあるが、飛牙そっくりの相手と会話をしたいと思うほど、クーは過去を乗り越えてはいない。
「各階には開いた扉があって、人はその扉を閉めながら上へ上へと登っていくそうです。上の階へ行くほどに閉める扉は減っていきます。そして最後に、閉められる扉が亡くなったら……」
嫌な一呼吸に、クーはつい振り返ってしまう。すると、偽飛牙は苦笑とも嘲笑とも取れる曖昧な笑みでその先を紡ぐ。
「死ぬんだそうですよ」
無意識のうちに強く引いた扉は、ガタガタ音を立てただけで開かない。
「まるで……この塔みたいだな。ここはどれも閉まってるが」
苦い顔で、次の階へと登りながら呟くと、背後でゾクリとするほど静かな声が呟く。
「ここは貴方の人生の塔でさえある。そして、縛られた私自身の内側でもあるのだけどね」
勢い欲振り返ると、偽飛牙は優しく微笑み返してくる。
「どうなさいました?」
「……いいや」
クーは次の階に足を踏み入れて、咳払いした。きっと聞き間違いだ。そう信じたかった。
更に登っていったが一向にどの扉も開く気配はなく、夕陽が空を焼くのを見ながら懐中電灯を点けた。
「今時、照明ぐらいないのか」
「まぁまぁ、こういうのも情緒的で宜しいじゃないですか」
そう言って笑う偽飛牙は、懐中電灯ではなく長い柄の先に灯篭を結わえた提灯である。
「ふん」
更に登り、夕食で足を止めた時、偽飛牙がまたもどこかへ行ってしまうと、今度は別の影が姿を表した。
それは、表情の欠落した陰気な人形のような白竜人で、クーの姉の一人である。それもまた手の中の竜が追い払った。
「私をそんなに、その手で殺したいんですか? 青蘭姉さま……」
夕食を終えて更に階を登ると、体が急に冷えてきてクーは震えた。夜気が下りてきたらしい。
見かねた偽飛牙が、厚手のローブを貸してくれると少し寒さをしのげたが、芯まで凍えるような寒さを感じずにはいられなかった。
階を登る度に、寒さが増し呼吸が荒くなってきたクーに、偽飛牙は眠ることを薦めた。
きっと、夜気に当たって疲れが出たのだろうと付け足して。
クーもそうなのかもしれないと思って、諦めて眠ることにした。見れば、頭上の窓には月が煌々と夜空に輪郭を浮かべている。
「おやすみなさい」
そう言って微笑んだ偽飛牙のことをやはり信用はしていなかったので、決して深い眠りに落ちてはならないと思ったが、体は深い眠りへと落ちてしまった。そう、死んだように。


「最初、彼女が間違って扉を開いてしまった時、私は彼女のことを"無礼な客だ"と思ったんだ」
そう言って、クーの手を握った影が微笑む。
「でも、次にやって来た彼女に私はドキリとした。被毛についた水が、まるで水晶の欠片のように彼女を飾っていて、思わず"綺麗"と呟いてしまった」
長椅子に横たわるクーの顔を覗き込んだ竜が、影をちらりと見る。
影は見られていることなぞ気にしない風で、クーの頬に手を伸ばし、僅かに躊躇った後ゆっくりと頬を撫でる。
「柔らかくて暖かい……それがこんなに心を満たしてくれるなんて」
頬を撫でる影の手を、竜が突いた。
「君も彼女を気に入ってるのはわかるけど、私だって彼女を気に入ってるんだ。独り占めはしないで欲しいな」
文句を言うと、竜は鼻を鳴らしてそっぽを向く。影は小さく溜息を吐いて、もう一度クーを見た。
「あぁ、どうか帰ってしまわないで、私と一緒にいてくれたら良いのに」
心底切ない声で言いながら影は、動かないクーの胸を見た。
月明かりでぼんやりと光る厨房着の胸元は……赤黒い染みで汚れている。


翌朝、クーは目覚めると、すっかり元気になっていた。
昨夜の荒い呼吸と芯まで凍える寒さはどこへやらと言った感じで、伸びをした胸元は、皺こそ寄っていたものの汚れた後もない。
「おはようございます。ご機嫌宜しいようでなによりです。ただいま朝食の仕度をいたしますね」
そう言って偽飛牙は朝食を取りにまたもどこかへ消えた。次に現れたのは、見ず知らずの女の白竜人だった。
『あんたの食事には毒が入ってるわよっ! 誰もあんたに優しくなんてしてくれないの! それを忘れることは許さないわ!』
これが、昔、自分の食事に毒を持った姉なのだろうと思いながら、クーは言い返した。
「私はあいつを信じない。だが、妃鈴姉さまの言葉も信じない。貴女が私を殺そうとしたことを、私は決して忘れないのだから」
『……そんな威勢の良い言葉が言えるなんてね。でも、私だから言えたんじゃない?』
竜に吼えられて消え去る中クックと笑った女の言葉に、クーは言い返せなかった。
朝食を終えたクーは一度上を見上げる。昨日のペースを考えると、夕方には最上階へ着くだろう。
階段を上がるたびに、体が重くなっていくのを感じながらクーはそれでも登る。
きっと、こんなに長い階段を上ることが少ないからだ。そう言い聞かせて。
昼になり昼食の仕度で偽飛牙が消えると、クーは次に来るだろう相手はどちらだろうと考えて体を震わせる。
その震えに促されるように、すぐ傍に足音が近づいてきた。小さな足音は子どものもの。
目を開いて顔を上げると、手の中に握った竜と同じ顔があった。
「小狼……」
『いままでの奴等と違って、お前と出会った頃の姿で驚いただろう。少し趣向を凝らさないと、やっぱりつまらないと思って』
にこりと笑った少年は、クーのすぐ上の兄の幼少時代のままだ。
『お前ずっと前に、逃げ出したお前のことをオレや飛牙兄がどう思ってるだろうって考えただろう?』
言われて、クーは驚く。
確かに、彼等の元を、生家である陽家を逃げ出して、あわや野垂れ死にそうになった時そんな事を考えたことは確かだ。
驚いているクーに、少年は無邪気な笑みで答える。
『お前は昔も今もこれからも、オレのオモチャなんだよ。オレ以外の奴は、飛牙兄や麗華姉は別だけど、それ以外の奴らがお前を虐めちゃいけないんだ。例えばこうやって遊んだりね』
傍らまでやってきた少年が、クーの唇を強引に奪い、胸の膨らみをきつく掴む。
「んっ!!!」
反射的に少年の体を押し飛ばすと、今まで黙っていた竜が吼える。
すると、少年は甲高く笑いながら床を蹴り飛び降りた。
『あははは、次は飛牙兄がやってくるぞ! 怒った飛牙兄はオレよりも怖いぞ!!』
震える足で床の端まで行き、そっとその先を除くと、小さな影は空中で霧散してしまった。
クーはその場にしゃがみ込んで、心配そうな表情で見上げてきた竜を抱き上げる。
心配してくれているとは思わなかったが、やはりと思う答えに嗚咽する。
結局、あの男にとって、自分は殺さなければ何をやっても許される玩具に過ぎないわけだと思うと、胸が痛んだ。
大粒の涙を零すクーに、青銅製の竜は頬を摺り寄せて鳴く。まるで励ますかのように。
「……ありがとう」
そう呟いて、少し強く抱きしめると、なんだか翼の生えた子犬を抱きしめているようだなと思った。
不意に、後ろの扉が開く音がして驚いて振り返ると、偽飛牙が食事を載せたカートを押して現れた。
「……私の顔に何か?」
不可解そうに尋ねてきた言葉に首を振り、食事の席へ就く。
次は飛牙が来る。それまでに、それまでになんとしても出なければ。
それからのクーは、更に足を速めたつもりだったのだが、確認の速度は次第に遅くなってきた。
最上階まであと三階というところで、とうとう膝が震えて近くの長椅子に座り込む。
「……ハァハァ……どうしたんだ……ハァハァ……私は」
荒い呼吸を整えようと肩で息をする。
まだ夕暮れは遠く、空気はむしろ熱いぐらいなのだが、クーの体は氷のように冷たい。
傍らで少しでもクーを温めようと、その手を擦る偽飛牙の顔は、何かを知っているようで……とても暗い。
「どうした……?……私が死ぬとでも……言いたげだぞ……」
「実際にそうなんですから仕方ないじゃないですかっ! 貴女は現実に戻ったら死ぬんですよ!?」
そう怒りながら涙した偽飛牙に、クーは溜息を吐いた。
「……やっぱりな。……そんな気はしてた」
言ってから、クーは自分が奇妙に落ち着いていることに気付く。
そうすると、飛牙の影に怯えて、一刻でも早く帰りの扉を探そうとしていた自分が可笑しくなる。
「……ははは……こんな時に……飛牙と同じ顔に……かしずかれてる、なんて……」
別にそんな事を言いたかったわけではなかったが、自分の言葉が楽しかった。
こんな終わり方でも良いかもしれない。死ぬ前に、過去を振り返れて良かった。
いや、良くはないのかもしれないが、これは逃げ出した自分への罰かもしれないが、なんとなく、兄姉達に会えて良かった気がした。
「……さて……それじゃあそろそろ死にに戻るか……」
起き上がると、胸が痛んだ。見れば、厨房着の胸元が赤黒く汚れている。
これは死んでもおかしくないわけだと思いながら、長椅子から立ち上がる。
「そんなに死にたいなら、ご自分の足で。でも、ここに居れば貴女は死なないで済むんですよ」
ふらつくクーは、笑って首を横に振る。それを見た偽飛牙は、渋々と言った表情で杖を渡した。
ゆっくりと確認しながら、クーは、今だに現れない飛牙の影を考える。
きょうだいの中で最も美しく、最も頭がよく、最もなんでもできたその男は、幼いクーを"汚れ物"と呼びながら虐待した。
今でも思い出すのは、虐待を終える度に、まるで自分が傷ついているかのように苦しそうな顔をしていた兄の顔。
死を覚悟した今、彼に責められても恐ろしくは無いが、何か言ってやりたい。でも、何を言えば良いだろう。
過去の仕打ちに対する怒りは忘れないが、それを謝ってもらっても意味がないだろう。
表面的な謝罪に何の意味があるかわからないし、彼がそんなことをするはずもない。
それに、本当に欲しかったのは謝罪ではない。
本当に欲しかったものは……。
クードが最上階へと上がり、最後の扉に手をかけようとした瞬間、扉と彼女の間に偽飛牙が立ち塞がった。
「考え直してくださいませんか? 私は貴女を愛しているんです。ずっと一緒に居たいんです」
言われて、クーは杖を放り出し相手の胸倉を掴んだ。
「今更それを言うのか!? 今更、今更私に、そんなことを言うのか!? 飛牙兄さま!!」
言ってから、自分が泣いていることに気付いたクーは、心が痛いのか体が痛いのかもわからないままに胸を押さえる。
「ずっと、優しくして欲しかった……。あの頃の私は、助けてという言葉さえ知らずに、いつ終わるかもわからない辛い人生に怯えていたから……」
長い沈黙が塔を凍りつかせてしまったようだった。
(あぁ、自分は彼等に愛されたかったんだ。今更そう思っても意味はないが)
ふと、クードが顔を上げて笑う。
「お前とここに居るぐらいなら、現実に戻ってちゃんと死を実感した方が良い。そこをどけ」
偽飛牙が泣きながらクードの手を掴む。
「いやだ。私は貴女に死んで欲しくない」
その言葉に少し気持ちが揺らいだ。たぶん、兄と同じ顔だから。
しかし、クーは首を横に振った。
「強制されるのも閉じ込められるのも、もう、懲り懲りなんだ。最後ぐらい自由にしたい」
クードが偽飛牙の手を払うと、偽飛牙は辛い顔で脇へと退いた。
「ありがとう。顔は気に食わないがな」
そう言ってから一度深呼吸して扉を開ける。
開かれた扉の先は薄暗い部屋で、誰かの泣き声がした。見れば、シホが泣いている。
「クーちゃん!! どうして死んじゃったの!? ねぇっ!!」
そう言ってシホが泣き縋っているのは、白い布で覆われたクー自身。
その傍らにもう一人誰かが立っていた。
「クー…」
そう呟いた男は、家を逃げ出した少女に、"クー"という名前を与えてくれた竜人。
途端に、決意が揺らいで、クーは叫んだ。
「どうしてシホが泣かなきゃいけない!? 兄さんが困らなきゃいけない!? 私はここにいるのに!!」
理不尽な悲しみが襲ってきた瞬間、目の前の空間から白い手が伸びてクーを掴もうとした。
これにひっぱられて扉の先へ行けば死ぬ。
そう思った瞬間、クーは後ろへと引っ張られた。見れば、泣き顔の偽飛牙が、クーを抱えて床を蹴っていた。
しかし白い手もクーを奪おうと伸びてくる。その手を阻むように青銅製の竜が手に襲い掛かる。
手が行き先を妨害されてたじろいだ瞬間、三つ下の階まで飛び降りた偽飛牙は、手近の扉を蹴り壊した。
中は光に満ちて、その先が見えないが、不思議と恐ろしい感じはしない。
「僕は君が死ぬのを目の前で見たくないんだっ!!」
それだけ叫ぶと、偽飛牙はクーをその中へと投げ入れた。


目覚めると、見慣れない天井があった。周りを見渡すと、見慣れた顔が笑う。
「クーちゃん!!」
握ってきたシホの手を握り返したクーは驚く。
「私は……死んでないのか?」
言ってからむせって苦しくなる。見れば沢山の管が自分に繋がれていて、無傷ではないことを証明している。
「お医者さんがね、このまま目覚めないだろうって言ってたんだよ!! でも、クーちゃんは生きてるの!! 生きてるんだよ!!」
そう言って泣く少女の頭を撫でたかったが、体は思うように動いてくれなかった。
巡回に来た看護婦が驚いて医師を呼びに行き、駆けつけた医師が笑顔で「良かったね」と言った。
暫くして疲れを訴えたクーを残し、全員が部屋から出て行った。
「もし、目覚めなかったら……」
ふいに、別れ際の取り乱し涙ぐむ偽飛牙を思い出す。助けられたのかもしれなかった。
そう思っているうちに、うとうとして眠りに落ちる。
夢の中は今までに見たどの夢よりも、暖かくてふわふわしていて心地よく、クーはその中を漂っていた。
すると、遠くから誰かが走ってくる。声をかけなければいけない気がして引き止める。
「宅配便っスね。あそこ当ての荷物を送り主から直接渡されるなんて珍しいっスね」
輪郭の無い男が笑う。
クーは渡すものが無い事を言おうとしたが、男が先に言葉を紡ぐ。
「じゃあすぐに届けるっスね」
男がクーの手から何かを受け取ったので、クー自身が驚き尋ね返そうとしたが、男はすぐに走り去ってしまった。


凛と透き通った鈴の音が響き扉が開かれる。
「宅配便っスー……ってなんでここに在るんスか?」
扉の外から響く拍子抜けするほど底抜けに明るい声が問うと、少女は鼻を鳴らす。
白い羊の背に跨り、上から落ちてくる破片を避けるために黒い傘を開いた少女は、頭から足まで真っ黒いゴシックロリータ風のドレスに身を包んでいる。
「ここの馬鹿が一目惚れした相手にこっぴどくフラレて再起不能なの。おかげであたしはここの店番を任されたわけ」
「へぇ、それはご愁傷様っス。っと、そろそろいくっスね」
言いながら扉が閉まり、いつの間にか足先に置かれた荷物を少女は見下ろす。
その傍らを縫うようにして飛んできた竜が、荷物を掴むと、崩れ落ちつつある塔の中央に置かれたテーブルの上へと置いて、豪快に梱包を切り裂く。
少女はその傍らへと羊を進め、箱の中を覗きこむ。
中身は感じの良いシルバーアクセサリーだった。
「あら、ここに来る代物とは思えないほど優しい香り。豊かな魂と穏やかな心の香りがするわ」
少女が触れようとした瞬間、竜は牙を見せ付けて威嚇したので、少女は手を引っ込める。
「怖いなぁ。ま、いっか。それで、これからどうするの?」
少女の意味深な微笑みに、銀製の首飾りを咥えた竜は背を向けて、塔の奥へと姿を消した。


クーが目覚めると、そこは見慣れない場所だった。
よく見れば病室のようで、緊急治療室から移されたのだと分かった。
そこへ看護婦と見知らぬ男がやってきた。どうも、面会らしいのだが、クーにはその男を見た記憶さえない。誰だったろう。
「失礼ですが、どなたですか?」
看護婦が去った一人部屋に、クーの声が響く。
すると、妙に目の血走った男は、昔話をするような口ぶりで話し始める。
「私はね、とある政治家先生の秘書を務めていたのだがね、ある日彼は死んでしまった。おかげで職にあぶれた私を、妻子は見捨て一家離散。残されたローンさえ払えない私に司法省の通達が着た。先生の罪に加担したとして出頭するようにとね。もう、大変だったよ」
遠くから誰かが走ってくる音を聞きながら、まだ動かない体を横たえて、クーは男の話を聞く。
「ところでその先生なんだけどね、死因は何だと思う?」
尋ねられて、クーは小さく首を横に振る。
「他殺だよ。それも、プロの殺し屋にやられた」
言われて、クーは自分が手にかけた政治家達の顔を思い出して行く。誰のことだろう。
「そこで私は、私の身に起きた不幸のはけ口を探したわけだ。そして、暗殺者の君の元を今日訪ねたわけだ」
そう言って、胸ポケットから護身用らしい銃を取り出す男。
「他人はお前の怒りの捌け口じゃない。勿論、この私もだ」
クーは身じろぐことしかできない自分の体に苛立ちながら、男を睨みつける。
走ってくる足音がこの病室に近づいている。もしかしたらこの男を追ってきた警察かもしれない。
しかし、間に合わないだろう。クーは悟って笑った。
結局、私は死ぬ運命だったらしい。それも、こんな身勝手な奴に殺される運命。つくづく、他人に振り回されてばかりの人生だな。
「何がおかしい、この人殺しめ!」
男は自分の事を笑われたと思ったらしい。銃口がクーの額に押し付けられた。
「そしてお前も人殺しになるんだ、愚か者」



名   前:クー=ヴァン=ジ・エアリス
愛   称:表では『クー』  裏では『クード』と呼ばれている。
年   齢:22歳 肉体年齢同じく
性   別:女
種   族:竜人
世   界:世界名『セントラルアーク』の、東部の某国。数多くの獣人等がごく普通に共存している。
文明は1970年代後半の現実程度。魔法は存在するが希少。
職   業:フリーター。暗殺などの裏の仕事もこなす。
飲 食 店:裏の仕事の情報収集にて使う店だが、ごく普通の表の客も多い。
性   格:基本的に友人が少なく、無口。ただ黙々と仕事をこなして日々を生き抜いている。
不幸要素:過去参照
備   考:灰色の毛皮の、獣毛竜人。黒い角一対に白い長髪と赤い瞳。翼なし。
店   主:『そちら』もしくは『貴様』
第一印象:青銅製の西洋竜型。頭部が兄(小狼か飛牙)にそっくりで、嫌悪感を覚えた。


過去・・・
とある名家で、その血族の女性は例外なくずば抜けて高い容姿を持つことで有名。
クーはその家の次女だが、容姿が普通で翼も無い『できそこない』で、世間にその存在が知られぬまま屋敷の奥深くに幽閉されていた。
殺されこそしなかったものの、家族からは鬱憤のはけ口として暴行や強姦を受け、拘束されたまま一日を過ごす日も多かった。
ストレスや欲求不満の捌け口として、日常的に暴行や強姦を受けていた。
15歳の時に脱走に成功し、以後は隣国に渡りさまざまな職で食いつなぎ、裏の世界にまで足を踏み入れて今に至る。
友人と呼べる存在は数人いるが、裏の仕事のことは秘密にしている。
また、裏の仕事の同僚は、いつ敵に回るとも知れないため友好関係は無い。


一人称『私』二人称『貴様』
口調に女性らしさはまったく無く、自ら女性だと言わなければ性別を間違えられることも多いが、間違えられても仕事に支障が無ければ別に訂正もしない。
魔法は使えず、武器はナイフや拳銃。隠密性を無視していいのならば長柄の青龍刀(薙刀型)も使う。
本名は『陽 春龍(ヤン シュンロン)』 この名で呼ばれると逆上するが、本名をばらしたことは無いため滅多に逆上することは無い。
15年間、ろくに運動も教養もない拘束生活が続いていたため、竜人特有の身体能力に頼っている。現在修行中。
容姿に関しては既に気にしないようにしているが、翼のないことだけはコンプレックスになっている。
また、暴行を受け続けていたため、痛覚は少々麻痺しており、自傷行為癖まである。
家族に散々弄ばれた所為で性的交渉には慣れてしまっており、放浪時代は身体を売ったことさえあるが、身体的・物理的に拘束されることを酷く嫌う。 余談だが、例の『店主』には最初に本名で呼ばれ、激怒していた。


『出来損ない』である点をまとめると、以下となる
顔が良くない(悪くもないが)、体毛が灰色(通常は白)、髪が白い(普通は黒)、瞳が赤い(普通はこれも黒)、貧乳(普通はかなり)、翼なし(普通は有る)


身だしなみには無頓着でいい加減だったが、友人から少しずつ教わっている。
普段はラフな服の上にコートを羽織っており、相変わらず女性らしさは少ない。

キャラクター提供元 : 大神 零音 様



最終更新日 2005/05/06
感    想 私の創作活動が色んな意味で大きく変わった話。
        クーちゃんが居なかったら「白い大地」もありませんでした。
        そのわりに「殺していいですか?」と、最初に尋ねたっけw
        この話を書くにあたりクーちゃんの資料として、
        レーネ様より『鈴の音の前に誘われて』を頂きました。