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炎の島が遠のき、小さく輝いて、やがては海に消えた。
広い海を陸とは別の方向へと進めば、鯨の潮吹きトンネルを越えて、
やがて珊瑚のモザイク柄を敷き詰めた青い回廊に達する。
だが、忘れるな。ここは神聖な海である。決して陸の穢れを許しはしない。
「ねぇ、本当にあんな中に飛び込むの!?」
リベルテが叫ぶ。無理もない。前方の海上には荒波を立てる大嵐が、今まさに落雷を落としているのだから。
「当たり前だ。折角炎の竜が太陽を調節してくれたのだから、この機会を無駄にはできない。」
ジェラーニヤはそう言って、スピードを上げて嵐に飛び込んでいく。
「ヴィスは大丈夫なの?その…濡れて。」
「大丈夫だよ。炎の竜の火を消すには海を泳ぐ程度じゃ無理だからね。って言っても、やっぱり気持ちは悪くなるけど。」
ヴィスの顔は真っ青だ。
当人も認める通り、水に当たると死んでしまうとかそんな事はないのだが、長時間強い水を浴びていると、“水に当たる”のだ。
人間で言えば、日射病のようなものに似ている。頭がくらくらして、気持ち悪くて、しばらくまともに動く事すらできなくなるのだ。
「だが、そういう困難さえも飲み込んでついてきた旅であろう。文句は言えまい。」
凰火の言葉にヴィスは笑い泣きをするしかなかった。
「さっさと来い!!」
ジェラーニヤが嵐よりも荒々しい声で叫ぶ。
門前の虎後門の…とあるが、今のヴィスの状態を例えるなら四面楚歌の方がお似合いかもしれない。
怒鳴るジェラーニヤの前には、大嵐。真下には海が横たわり、背中には妥協を許さない旅人。唯一の救いはリベルテがしきりに心配してくれることだけだった。
嵐の中へ入ると、誰もがその激しい雨の礫に体を叩かれた。雷鳴が轟き、雷の矢が何度となく飛んでくる。荒れる海は高い波を生み出しては飲み込もうとするし、その波間に恐ろしい顔の女の首がいくつも浮かび、こちらを見て笑っている。
「何、あの怖い顔!!」
リベルテが恐怖で大暴れすると、凰火は四苦八苦しながらどうにか落ち着かせる。
「海で死んだ者があぁやって高波に浮かぶんだよ。人間って、本当におばけになりやすいから。」
答えるヴィスの顔色は更に青くなっている。
実は、人間も地上も大好きバンザイ!なヴィスではあるが、唯一嫌いなものがある。それは、お化けとか幽霊といったものだ。
怪談話を開けば女の子よりも早く叫ぶし、お化けが出ると言われる廃墟を訪れた時には謎の白い陰を見た後腰を抜かし、同伴した友達に泣きながら肩を貸してもらったという筋金入りだ。
どうして死体とか戦争は大丈夫なのに、おばけが駄目なのかは本人も知らない。
「嵐が切れる。虹が出るぞ。」
ただ一人、涼しい顔の闇の竜が振り返る。
そして、前方に顔を戻して深い深い溜息を吐いた。
号泣する若い竜と、その背中で今にも落ちそうなほど暴れる少女、それを落ち着かせようと必死の男が空を飛んでいる。
「開いた!!」
闇の竜は声を上げて海を見た。
嵐が過ぎ去った海上に大きな虹がかかり、海面に映っている。
「虹に入るぞ!!」
ジェラーニヤは虹の中央、海と空の分離する水面に勢いよく飛び込む。
嵐が過ぎ去り、落ち着いたヴィスもその後を追うように飛び込む。
水しぶきがあがり、二匹が海中に消える。
海の中に潜った事があるならば、見上げた時に海面がキラキラ輝くのを知っている人も多いだろう。
だが、2人と2匹にそんな余裕は全くない。
海底へと続く水の渦の中を、延々と落ちていたからだ。
ジェラーニヤ曰く「この渦の中は空気で満たされているから地上の生き物でも苦しくはないだろう」という事だった。
確かに、苦しくはないのだが、何分海の中で竜巻が起こっているようなものだから、そこら中から海草が飛んできて、ヴィスもリベルテも凰火もすっかり海草臭くなってうんざりしている。だが、ジェラーニヤには感覚がないのか、海草が勢いよくベチッと痛そうな音を立てても別段気にする様子はなかった。
暫く潜ると、渦は消え、全員の体が空気の玉に囲まれた。
「もうすぐ水の竜の棲家だ。その証拠がこの空気の玉だ。これは水の竜だけが使う特別な術で、海の外から来る客人を迎える為に作られたそうだ。」
ジェラーニヤの説明に素直に頷くヴィス。しかし、リベルテは不満そうだし、凰火に至っては実に不満そうである。
「何故、こんな場所を通るんだ。」
凰火が口を開く。
実はここ、巨大イカだの巨大鯨だのと言った、人間なんて飲み込むのは朝飯前よ!くけけけ!と叫んでいそうなステキな生物達のバトル地域だったのである。
おかげで、空気の玉は巨大鯨の尾びれによってぶっ飛ばされたり、巨大イカに墨を吐き掛けられたりと散々な目にあったわけだ。これで楽しく魔法の講義を受けるのは、よっぽどの変わり者か竜ぐらいなものだと凰火は心底思った。
突然、水の色が変わった。
先ほどまでは暗く、いかにも深海と言った感じだった水が、珊瑚の広がる浅瀬のように美しく澄んだ色になったのである。
「ここからはもう竜の領域だ。地上の海とは水質も何もかもが違う。」
ジェラーニヤは曇り顔で説明しながら、落胆と同情のこもった礼をしていく。
空気の玉の外では小魚ばかりが整列し、しきりに口をパクパクしている。
「かわいい!あんな魚達見たこともないわ!!」
色とりどりの魚にリベルテは大喜びするが、ヴィスの方は暗い顔だ。
「どの魚もこちらを向いているとは…。あまり良い気分ではないな。」
釣りをする(というか、釣り以上の技を持って魚を捕獲する)凰火としてはあまり嬉しい気分ではないのは当然だ。
一匹の魚がヴィスの前にやってきて、大きな口をパクパクしてから泳ぎ去った。
ヴィスが泣きそうな顔をする。
「ねぇ、彼等がなんて言っているか聞きたい?」
ヴィスの言葉に「勿論。」とリベルテは答える。魚の言葉を知るなんて、人間として生きていたらまず不可能な話だからだ。
凰火は小さな沈黙に陥るヴィスを見て、魚達の言葉がろくな事ではないと悟ったが、それを知る義務がある事も知っていた。
だから、ヴィスの言葉に小さく呻くしかできなかったのだ。
ヴィスはこう呟いた。
「人間よ、海の藻屑と化してしまえ。」
水の竜の棲家にたどり着いた一行は、吸い寄せられるように大きな洞窟の中へと引き込まれた。
洞窟の中は水の中を感じさせない明るさと、静けさがあり、その中央では大きな真珠貝の殻の上で水の竜の長老竜が背中を向けて待っていた。
幻想的な水の中の情景にため息を吐いたヴィスとリベルテはまだ知らない。そこに座る背中美人の正体を。
珊瑚を鬣に飾った竜の招待を知る凰火は、額に手を当てて首を横に振る。ジェラーニヤは、もはや蒼い体を見てすら居ない。
「大変遅れましたが、闇の竜ジェラーニヤ、ここへ参りました。」
その言葉に水の長老竜がゆっくり振り返る。
ジェラーニヤと凰火が覚悟を決めた瞬間、以外な声が帰ってきた。
「よく参られた。闇の竜とその仲間達よ。」
「男なのに綺麗ですね。」
ヴィスは感覚のずれた誉め言葉を言う。
「ありがとう。」
「やっぱり雄なのぉー!?」
と、絶叫しているリベルテ。ちょっと心外そうな顔だが、☆も♪も飛ばさずに「そうだ。」とだけ答える水の長老竜ヴェルナー。
凰火とジェラーニヤが身構えた理由をあえて説明すべきだろう。
実はこの長老竜ヴェルナーは、鍛冶屋のオヤジ張りの男らしい声と、どこの陽気な女性かわからない喋りを持つ、まごう事なきオカマ竜である。しかも、ジェラーニヤと凰火に精神的ダメージを与えるだけの乙女っぷりの持ち主で、実に最強にして最凶のウインクの持ち主でもある。
並みの人では耐え切れない陽気さなのだ。
だが、今のヴェルナーにその面影は(装飾を除けば)ほとんどない。
「光の竜の秘密を知りに来たのだろう?」
「そ、そうだ。」
ジェラーニヤはあまりのギャップに当惑しながらも頷く。
「ならば、教えよう。光の竜の秘密を。」
ヴェルナーが部屋の中央で一度輪を描くように泳ぐと、それを合図に総ての出入り口が閉じる。
「それだけの秘密だ。」
ジェラーニヤはヴェルナーの言葉に頷く。
つまり、仲間にさえも打ち明けられない大きな秘密であり、知ればろくな事にならないことを示していた。
ヴェルナーが言うにはこうだ。
光の竜とは、命の光を喰らう"地上に一番近い竜"らしい。何故なら、闇の竜がシェーマの煙を食べるように、炎の竜がマグマを食べるように、生き物として存在するにはあまりにも異質な食生活と違い、生き物を食べているからだそうだ。勿論、命の光という事で物質を食べるわけではないのでまだまだ生き物としては弱いが、それでも、地上で生きられる唯一の竜なのだと言った。
「えっと、ヴィスやジェラーニヤの食事よりも私がお肉や野菜を食べるのに近いって事?」
「そうだ、ドワーフの血を引く幼き者よ。」
だが、地上の生き物に強く干渉する光の竜を疎む者も少なくなかったらしい。特に、闇の竜は皆顔をしかめて「命の光を食べるなんて恐ろしい」と口々に言った。だけど、闇の竜はお堅いし酷い闇をその陰の中に飼っていたから、他の種族にその考えはあまり受け入れられなかった。自分が食べられる番になるまで。
「確かに、僕や僕の知り合いが食べられるのはあんまり良い気分じゃないですね。」
「そう、でも、それは自然に生きていればいつかは襲ってくる。死は地上に生きる総ての生き物に寄り添っているから。」
でも、闇の竜はどうしても気に入らなかった。何せ光の竜の食欲は、闇の竜を殺せる唯一の力だったのだから。やがて、闇の竜はある言葉を世界中に言いふらした。それが何かは語らない。それは光の竜の尊厳を踏みにじる最悪の言葉だったから。もはや総ての世界で語られるべき言葉ではない。
「それほどの言葉を言われたとなると…それで光の竜は世界を憎んだのか?」
「違う。簡単に言ってしまえばそう…でも、違う。」
光の竜は世界中から笑われたけど、それでも自分達が生きる事に自分達は恥る事をしなかった。だって、彼らは地上に一番近くても、誇り高い竜だったから。
だけど、悲しい事は起きるもの。差別を好む種族が地上にいる。彼らは光の竜を差別し、あまつさえ仔竜狩りを行った!だから光の竜は怒りと共に世界をつぶすことにした。辱めた闇の竜も仔竜を狩る物も、そんな差別を止められなかった世界もどれも憎むべき存在だったから。
「それは、俺に対する文句か?」
「えぇ。勿論。古い時代には光の竜の友達も沢山いたから。」
ジェラーニヤは静かに怒りを込める。だが、もはや怒りで暴れたり怒鳴ったりはしない。炎の長老竜と話して、彼女に心を焼いて貰ったのだ。迷いも怒りも総てまとめて。だから、機嫌は悪かったが、彼の心に怒りは生まれなかった。生まれる余地すらなかった。その事を誰も知らない。
「ところで、光の竜の秘密はそれだけか?」
ジェラーニヤの言葉にヴェルナーは頷き、そして…☆を飛ばしはじめた。
「やっとあたしのお仕事が終わったわ☆まったくぅ、長老竜として堅苦しく接しなさいってぇ炎の長老竜ちゃんが言わなかったらぁーあんな首が痛くなるような喋り方しないわよぉ☆☆☆」
突然の☆言葉の襲撃に、リベルテは唖然とし、凰火は「悪夢再来」と呟き、ジェラーニヤは固まる。
ヴィスだけは楽しそうに笑う。
「変わった喋り方ですね。僕の友達にはいませんでした。」
「そういう問題じゃないだろ。」リベルテの呟きをヴェルナーは聞き流し、ヴィスに擦り寄る。
「あぁん、可愛い炎の竜の少年。お名前はなんていうのかしらん?あたしはヴェルナーよん☆」
「えっと、ヴィスヨールイっす。皆はヴィスって呼びます。」
たじろぐヴィス。
「まぁ可愛いな・ま・え♪」
とかなんとか言いながら、ちゃっかり頬に口づけする。
豪快な口付けを受けたヴィスは乾いた笑い声を吐きながら、なんとも困った顔をしている。
突然、リベルテが声を上げる。
「あたしはリベルテ・ネゴシアシオン!!突然だけど、ヴェルナーってどんな化粧してるの?」
その言葉に、今まさにこの場から逃げ出したいという顔をするジェラーニヤと凰火。気高い男だからこそ、オカマと化粧話には耐えられないようである。
「あら、貴女なかなか見る目あーるじゃない☆実はね、水の竜の棲家でしか育たない特別な花の花粉を使ってるのよん♪しかも美白効果あり!!」
「うわぁ、いいなぁ!!実はあたしもお年頃なんだけど、元々ドワーフって浅黒い肌だから地上の化粧品だと美白効果もあんまり期待できないのよねー。」
「わかるわかる。あたしの友達のドワーフもよく言ってたわ。なんでエルフみたいに白いお肌じゃないのかしら!って☆」
「やっぱり?やっぱりご先祖様も悩んだ道なわけ?」
「そうよ。こればっかりはねー。」
男三人にはついていけない会話が繰り広げられる中、いつの間にかリベルテはヴィスの背中から下りてヴェルナーの鼻先辺りをふわふわ浮いて喋りだした。
そして、どう盛り上がった結果なのか、化粧道具を取り出してきたヴェルナーは、逃げ道を失った男子達を見つめる。
その姿にうんうんっと実に楽しそうにリベルテが頷く。
「まさか…」
「みぃーんなとっても美形だから、お化粧させてもらうわねん♪」
ジェラーニヤは自分の思った事が現実に起きるのかと思っただけで、うんざりとしてしまったが、出入り口は閉ざされている。
最初の犠牲者はジェラーニヤだ。
なんか、化粧というより落書きになってしまっている。絶対に悪意がある筆使いだ。
次の犠牲者はヴィスである。
元々陽気で何でも受け入れられる勢いの竜なので、それほど嫌がりもせず、出来上がりは実に可愛らしかった。
なんというか、アイシャドウも口紅も、案外似合っている。
そんなヴィスは「もう誰も止められないだろうなー。」と呟いている。もはや女装を強要されても楯突く気はさらさらない。
だが、ここに、一人の誇り高い男がいた。生まれてこの方、二枚目を貫き通してきたし、自分の信念にはどこまでも忠実で、その意志の強さたるや彼に従う者は誰もが認める所にあった。だからこそ、彼の口から雷よりも激しい怒りが吹き出た事はなんらおかしい事でもない。
「お前等、いい加減にせんかぁ!!」
勿論、凰火の怒鳴り声である。
結局、凰火にぶった切られそうになったヴェルナーは「刺身にされたくないから」と笑いながら化粧道具をしまった。
「まぁ、なんにしても、結構楽しめたから良しとしますか☆」
「だね。」
いつの間にかフレンドリーなヴェルナーとリベルテ。勿論、反省の色なぞない。
「おちついて!!リベルテもいるのに切っちゃ駄目です!!」
ヴィスが凰火をしきりになだめる。その傍らでは、落書きのような化粧を必死で落とそうとしている闇の竜がいる。
「にしても、ヴェルナーの髪飾りステキね。そんな色の珊瑚は見たことないわ。」
リベルテがうっとりと見つめた先は、ヴェルナーの鬣に飾られた珊瑚である。
「ありがとう。だけど、見たことないはずだわ。だって、この子が最後の珊瑚なんですもん。」
ヴェルナーの声のトーンが一気に落ちる。
「最後の珊瑚?」
「あたしと水の竜の仲間達で、この不思議な色の珊瑚を見つけたの。珊瑚も動物だから、時々こういう変り種が生まれるってわけね。それで、皆でこの子の仲間を育てたわ。だってこんな綺麗な話し相手がいたら、水の底も楽しくなるでしょう?」
「珊瑚と話せるの?」
「勿論。だって、珊瑚も生き物だから、折られたら悲鳴を上げるし、満月の夜には深いため息も漏らすわ。」
ヴィスがふっと天井を見上げる。天井には色とりどりの珊瑚が光を浴びて気持ちよさそうだが、どれも眠っているようだった。
「この部屋の珊瑚は全員、地上の海にはもう仲間がいないから眠っているの。生きることが悲しすぎて、優しい夢の中にいるの。」
「どうして?」
リベルテが問う。問いながらも、理由には気付いていた。
何せ彼女も商人だ。美しい色の珊瑚がどれほどの高値で売られているのか知っている。実際にそれを見たこともある。
「人間が生きた珊瑚を手折るのは、まぁ、いつもの事ね。だけど、もっと酷い事をしたのよ。彼らは領土を増やすために海に土を投げ込んで、干拓と良いながら海を汚した。どの海も干拓の行われた場所は酷い悲鳴が何年も何年も続いたわ。そんな海から生き残ってたどり着いたのが、ここに眠る珊瑚達であり、貴方達を迎えた魚達。」
その言葉にリベルテは絶句した。彼女は干拓を推薦していたからだ。田畑が広がれば、もっと穀物は安く手に入ると思っていたし、実際にそうだったからだ。
「珊瑚はあたし達のお友達。波に浚われない、そこに居続けるおしゃべり友達。
人間達は生きた珊瑚達を狩り、その死骸で身を飾る。海岸に打ち上げられた珊瑚では満足できないらしいわ。悲鳴が毎日降り注ぐ。人間が自分達の領土を広める為に海を埋め立て続けるから。沢山の生き物が土の下に沈んでいく。だから、この仔はあたし達が育てた小さな珊瑚礁の最後の子供。今は眠っているけど、あたし達が地上から離れたら、まず最初にその海に放してあげるの。」
そう言って、髪飾りにしていた珊瑚を優しく撫でるヴェルナー。
「つまり、俺は水の竜が地上から離れる術も教えねばならんわけか。」
ジェラーニヤは憂いた顔で問う。今の彼にとって、世界の秩序を乱すものが光の竜なのか、人間なのかはわからなかったが、どちらも憎むべきものだと思えてきていた。
「そういう事よ。でなければ、ここに貴方を入れるなんて考えたくもないもの。」
「まぁいいさ。教えよう。だが、その前にこの三人を海の外へ出してくれ。いくら空気の玉の中と言っても、水の中に居続けるとろくな事にならないだろうからな。」
「そうね。ヴィス君の顔色も悪くなったし、仕方ないっか。」
ヴェルナーがまた水中で一回転すると、出入り口が開き空気の玉に囲まれた1匹と二人は海面へと流されていく。
「絶対に自由になってね!幸せになってね!!」
リベルテが叫びながら手を振る。
「貴方もね、リベルテちゃん☆」
ヴェルナーは優しく頷いた。その頬には一滴の涙。
「あぁいう優しい仔ばかりだったら、地上の海も暮らしやすかったのにね…。」
小一時間した頃、水面から突き出すようにジェラーニヤが戻ってきた。
「さぁ、行くぞ。まだ風の竜と地の竜に会わねばならん。」
ジェラーニヤは待っていた三人に目もくれず空を飛んでいく。
その顔にはもはや消えないのではないかという程の憎しみが浮かんでいた事を、三人は気付かなかった。
空が高く海を映している。ただ、おしむらくは輪郭のあやふやな雲が、美しい蒼を濁していることだろう。
最終更新日 2005/06/24
感 想 ヴェルナーのおかまっぷりは、好悪がはっきり分かれますね。 私としては結構好きなんですよ、こういうキャラ。 というか、うちのキャラって好悪分かれやすい奴多いなあ……。
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